最強のデータ分析組織 -大阪ガス- 河本薫 を読んだ感想

個人的な所感として大阪ガスが成功した理由は以下の四点かと思いました。

 

1. コーポレート部門にデータ分析専門の部署を作れたこと

2. データを統計分析する部署が13年前からあったこと

3. 学会やメディアといった外部に対して情報発信したこと

4. 人材育成で「学ぶカルチャー」を大切にしたこと

 

1. コーポレート部門にデータ分析専門の部署を作れたこと

ある程度大きな会社になると事業部ごとでそれぞれデータを取り扱ってしまっていると思います。しかし、全事業部のデータを本社のコーポレート部門で分析できているのが大きな点と思いました。例えばドローンと地図案内アプリを別々の部門で開発しているとして、ドローンのGPSと地図情報を別々に分析するのは明らかに損です。しかも多くの大企業は社内にデータサイエンティストがいないと言う理由で貴重なデータ分析を外注してしまっているのではないかと思います。

 

2. データを統計分析する部署が13年前からあったこと

データサイエンティストに必要な3つのスキル(ビジネス知識, コンピュータサイエンス, 数学統計学)の内、統計学に元々詳しかったと言う点も大きいと思います。元々エクセルを使ってかなり統計分析の経験があったのでしょう。これらの3つのスキルは満遍なく必要とされていますが、どれか一つ突出しているとかなり強いのでしょう。ちなみに大阪ガスはコンピュータサイエンスに弱いと書籍内で言われていますが、ここは上手く外注しているようですね、個人的には出来れば社内で全てやりたいところです。また、ビジネス知識の面では事業部に赴いて実際の仕事をみることで学ばれたそうです。この点については書籍でも詳しく述べられています。

 

3. 学会やメディアといった外部に対して情報発信したこと

日本人は外からの意見に弱いと書籍内でも言われていますが、全くその通りだと思います。外部から評価されることでコーポレートにデータを分析する優秀な組織がいることが社内に伝わったこと、とても大きな影響かと思います。また、外部のデータ分析のコミュニティに参加することも積極的に推奨しているようです。こうしていればずっと社内に篭っているのは本当に井の中の蛙になることはなくなりそうです。

参考:発表された論文のリンク

 

4. 人材育成で「学ぶカルチャー」を大切にしたこと

データ分析を行う部署に入る新入社員は元々大学でディープラーニングや人口知能、統計学を専門していない学生を雇うそうです。書籍を書かれた河本さんも会社に通いながら博士号を取得されたことから、社会人も学び続ける大切さをきちんとカルチャーとして根付かせているのも大きな点かと思います。書籍内ではこういった強い言葉を部下に言っているようです。「万が一、大阪ガスが倒産しても、年収○○万円の仕事に就けるだけの人材に全メンバーを育てます」。とくにこういった分野は技術の進化が早いですから特に大事でしょう。

 

最後に一言、実は最後まで読んでいません!8割くらい読んでやめました。もうちょっと具体的な話がほしかった・・。何かしら一つ具体的な分析の成功例を上げ、統計に使った数式、使ったシステムAWSの何々、その分析がビジネスに与えた利益(数値で)をこの書籍の最後3割くらい全て使っても良いので書いてほしかった。